ゲーム録

テレビゲームについて語る

 428 封鎖された渋谷で


サウンドノベル
セガ(開発:チュンソフト) 2008年12月4日発売 Wii

SEGASOFT WiiReview

片手操作

サウンドノベルとはゲームブックのように、途中で分岐がある小説のようなスタイルで、グラフィックとサウンドで演出されたゲーム。
それまでの推理アドベンチャーゲームはコマンド総当たりでエンディングまでたどり着けるものだった。
スーパーファミコンでのサウンドノベルは読み進めると自動でセーブされ、読み返すことができないようになっている。
いくつもの分岐点があり、いくつものバッドエンドがある。エンディングまでたどり着けば選択肢が増えていて、本編とは全く別のストーリーが展開していくゲームであった。


さて、本題は新作の「428」である。
実際に渋谷で撮影をした実写で、時折ムービーもあるが、基本は一枚の写真。
それをいかに臨場感ある表現にするのか。演出も良い。
物語は1人の視点からではなく、5人の人物を自由に選択してその人の物語を読み進めていくというもの。
その5人は1つの事件に絡んでおり、誰かの行動が他の人の運命に影響したりする。
操作は横持ちやクラシックコントローラーにも対応しているが、リモコン縦持ちで片手操作が一番やりやすいと思う。



誘拐事件発生

事件の発端は、女子大生マリアの誘拐事件。双子の妹ひとみに身代金を持たせ、渋谷のハチ公前で待つように犯人から指示があった。
まず最初にプレイヤーが主人公を操れるのは、誘拐犯を追う刑事・加納。尊敬する先輩刑事の心得を手帳に書き込んでバイブルとしているマジメな青年。
もうひとりは少年たちで構成される渋谷の自衛団KOK元リーダーの亜智。彼自身は組織のリーダーという感覚ではなく、愛する渋谷を守りたいという気持ちであったが、今のKOKは様変わりしているのを少しさみしくも思っている。
彼はひとみと出会い、巻き込まれるような形で彼女を追っ手から守ろうとする。


ゲームの最初で初心者用のガイドがつけられるので、そうしたほうがいい。説明書を読まなくてもできるようにチュートリアル的な構成になっている。
10:00〜11:00の1時間の出来事がとりあえずの区切りとなっており、1時間の物語を進み終えると次の時間へ「続く」となる。
次の時間を読むためには主人公全員をバッドエンドにすることなくたどり着かせなくてはならない。


11時からは大手製薬会社のウィルス研究者・大沢、うざいほどに熱血なフリーライター・御法川、そしてギャグかキーパーソンの隠れ蓑なのかまったくわかりかねるネコの着ぐるみ・タマを加えた5人となる。
事件は単なる誘拐事件ではなかった。
ネタバレになるから詳しくはいえないのがレビュー泣かせ(笑)


ゲーム内の時間では午前10から午後8時までの10時間。
4月28日のできごと。
ストーリーは裏切らない出来映えだ。とりあえずスタッフロールが流れるエンディングにたどり着くまでプレイ時間は20数時間。でもまぁ、お楽しみはそれからだ。



タイムチャート


5人も主人公がいると混乱してくるが、今読み進めている人物の1時間前のあらすじがすぐに読めるようになっている。
タイムチャートを見ればもっとわかりやすい。
縦軸が時間で横軸が登場人物で、何時何分に誰が何をしていたのかが表のようになっている。
タイムチャートはいつでも開くことができ、いつでも違う人物に移って読み進めることができるし、今まで読んだところからもう一度選択をし直すことも可能になっている。
タイムチャートは選択肢が現れた場面も一目瞭然なのだ。


バッドエンドになってしまうと、なぜそうなったのかヒントを読むことができるので、それを回避するために戻って選択し直せばよい。
他の人物の行動からバッドエンドとなることもあるので、そのポイントを探すのも楽しい。



ゲームシステム

文章の中に青い文字が出てくるが、それはTIPといって、「-」ボタンを押すと語句の説明文が現れる。
むずかしい用語の解説はもちろん、明鏡国語辞典にあるようなユニークな説明があったり、428における独自の説明だったりする。
TIPを使って心理テストのようなことをやったり、6話分の物語を綴ったり、その使い道もおもしろい。
ただの用語解説だと思っていても、それが事件に重要なことだったりするのであなどれないのだ。


赤い文字が出てきたら、そこから違う主人公へとJAMPできる。
タイムチャートからでも他の主人公へ飛ぶことはできるのだが、1人の主人公をずっと読み続けているとたまに「KEEP OUT」となって、それ以上読み進めることができないことがある。
そういう場合は他の人物を読み、KEEP OUTとなってしまった人物の名前が出てきたところでJAMPするとKEEP OUTを解除することができる。
とにかく5人はそれぞれなんらかの形で1つの事件に絡んでいるから、他の人物を読んでいるうちにネタバレしてしまうようなことがある。それを極力避けるようにしたのがKEEP OUTかもしれない。



ボーナスシナリオ

本編脚本は「忌火起草」の北島行徳氏。
そして一定の条件を達せすると出現するボーナスシナリオの脚本には我孫子武丸氏。こちらには小林涼子さん、須賀健太くんといった方々が出演されてます。
もうひとつのボーナスシナリオは奈須きのこさん脚本、武内崇さんイラストのアニメっぽいかんじのゲーム。会話文には音声付き。
ボーナスシナリオは本編からのスピンオフともいえる物語で、本編で多くを語られなかった人物の話となっており、分岐はない。


ボーナスシナリオが登場すると、白のしおりと黒のしおりがセーブデータのところに表示される。
初めはしおりの真ん中が何かの形に切り抜きされているが、ボーナスシナリオを読んでエンディングまでたどり着いたら栞にイラストが付くのでわかりやすい。


さらに条件を満たすとスペシャルエピソードが読めるようになるのだが、カルトクイズに正解したり、本編を読んで解放する鍵を見つけたり、隠し要素を見つける方法は今までになかった手法なので、それを目の当たりにしたら驚くだろう。
そうしてまた本編の中で番外編シナリオを見つけてバッドエンドを全部見つければ金のしおりとなる。
こちらも真ん中が黒い切り抜きとなっているので、ここで終わりではないということがわかる。
ここから先もおもしろい手法の隠し要素があるので、最後までたどりつきたいところ。



Wi-Fi

隠し要素はかなりむずかしい。そのためか、WiiConnect24でヒントが配信されるようになっているらしい。
現時点ではまだ配信されていないので、しばらくしたらヒントが届くのかもしれない。


据え置き機で今更サウンドノベルなんて……と思っていたが、満足のいく出来映えだった。
ファミ通クロスレビューで満点を獲得したらしいが、やっぱりこれも隠し要素まで全部含めての満点だろうと納得した。
もちろん、本編も丁寧な作りで、都心のど真ん中でよく撮影したなと思うし、内容もスリリングで楽しめた。
作品のテーマ曲も映画のようにかっこいいし、人物ごとにテーマ曲のようなものがあったり、音楽もすばらしかった。


TYPE−MOONによる「428」のスピンオフアニメの制作がなされているらしい。奈須・武内のタッグで、どうやらボーナスシナリオの続きになりそうだ。ボーナスシナリオは「428」の真のエンディングで登場した人物の過去について語られている。「428」よりもスケールが大きい話に思えるだけに、そのできが気になるところ。



ジャケット
428 封鎖された渋谷で