ゲーム録

テレビゲームについて語る

 かまいたちの夜

サウンドノベル
チュンソフト 1994年11月25日発売 スーパーファミコン
チュンソフト 2007年2月13日バーチャルコンソールダウンロード開始

SONOTASOFT VIRTUAL-CONSOLE

新ジャンルの確立

従来のアドベンチャーゲームは1枚絵を表示する部分とテキスト枠、場合によってはコマンド選択枠がそれぞれ区切られていて別々の枠に表示されていた。
それを絵の上に直接テキストを重ねるという大胆な手法でサウンドノベルという新しいジャンルを作り出したのはチュンソフトだった。「弟切草」に始まり、今作で第2作目である。このソフトのヒットによって同じようなスタイルのゲームがたくさんでてきた。


それまではCGで描かれているのが主流であったが、実写取り込みにすることによって、よりリアルな情景が浮かんできた。
人物は半透明の紫色で描かれたシルエットというのもまた今までにない表現方法で、小説のようにプレイヤーのなかで人物の実態が沸くような手法を取った。


ミステリアスな物語を彩る音楽も映画のようにマッチしていて特徴的だが、それとあわせて効果音も有効に使われている。
見た目の演出と音をフルに生かしたゲームだ。


畑違いから

脚本を手がけたのはミステリー作家の我孫子武丸氏である。タレントゲームはそれまでたくさん出てきたにしろ、ほとんど名を借りただけの物であった。だが、このゲームは我孫子氏の書いた小説をほとんどそのまま使用しているのである。


チュンソフトの社長はこのゲームを作るため、ミステリー作家に打診していたようだが、我孫子氏は「ドアドアのころから遊んでいます」というような回答をして彼にすんなり決まったという。


物語は主人公とガールフレンドがスキー旅行に出かけるところから始まる。ペンション「シュプール」は吹雪に包まれ、まさに孤立したところで残忍な遺体が発見されるミステリーゲームだ。
その他の登場人物はペンションオーナーの小林夫妻、バイトの2人、関西出身の香山夫妻、OL3人組、フリーカメラマン美樹本、サングラスの不振人物田中一郎。



マルチエンディング

物語を読み進めていくと、ゲームブックのようにシナリオ分岐が出てくる。初めのうちは物語にさほど影響はないが、殺人事件が発覚した後は行動次第で犯人に殺されてしまうこともあり、また犯人を当てることもでき、いくつかのエンディングが用意されている。
コマンドしらみつぶしで犯人に至るということのない配慮がされいるのもまた特徴だ。


いくつかエンディングを見てまた最初からやり直すと分岐が増えている。新しい分岐の方を選ぶと本編のミステリーではなく、アナザーストーリーがいつの間にか始まる。
オカルトチックな「悪霊編」、ハードボイルド風の「スパイ編」、雪山で迷う「遭難編」、喜劇的な「釜井達の夜編」があって、全21種類のエンディングを見るとデータをセーブするしおりがピンクに変わる。


この画面をチュンソフトに送ると抽選で「ちょっとエッチなかまいたちの夜」というミニドラマCDが300名にプレゼントするキャンペーンをやっていた。プレイステーションのリメイク版にはこの物語が収録されている。



ピンクの栞と金の栞

しおりがピンクになったら新たに「Oの喜劇編」と「宝探し編」のエピソードが楽しめる。
「宝探し編」には実はもうひとつ暗号が隠されていて、ある場面において暗号の指示通りのことをすると「不思議のペンション編」へと突入する。
これが信じられない暗号なのだ。プレイがうまくいかずイラっとして思わずそのボタンを押してしまうことはあるけど、まさか、ここでそのボタンを押すの?みたいな。


そして、すべての分岐を選択してすべての文章を読んだら金のしおりへと色が変わる。
ここまできたらもう充分遊び尽くしている。
一度読んだメッセージを読み飛ばす機能がまだなかったりするのだが、マルチエンディングだけでなく、アドベンチャーでマルチストーリーが楽しめるとは、このころにはなかったものである。


自分はしおりをピンクにするために、砂嵐で終わるエンディングに目をこらし、3Dの文字が浮かび上がってくるんじゃないかと何十分も見つめていたものだった……。