ゲーム録

テレビゲームについて語る

「時のオカリナ」を考察する

ゼルダの伝説シリーズをストーリー面から徹底解析します。
それぞれのシリーズの繋がりはどうなのか?
ネタバレ含みますのでご注意を。



主人公は?

コキリの森で暮らす少年だが、他のコキリ族の子供たちと違って妖精を従えていない。というのも、リンクはハイラルから命からがら戦火から逃げてきた母親が森のデクの樹に幼いリンクを預けており、コキリ族ではなくハイラル人だったからだ。ということは、そのころにもハイラルのどこかで争いごとが起こっていたということになる。

マスターソード

ハイラル城下町に隣接する「時の神殿」の台座に刺さっている。森、炎、水の精霊石を台座にはめ、王家が守る時のオカリナで時の歌を吹き、勇者によってマスターソードが抜かれた時のみ聖地へと行ける。
ただ、年齢が足りてないリンクはマスターソードによって魂が聖地に封印され、7年間眠ることになってしまう。勇者は貴重な存在だから、真の力が発揮できるときまで守られたのだろう。
精霊石はデクの樹、ゾーラ族の王女、ゴロン族の首領が持っている。
子供時代のマスターソードの台座には「三つの精霊石を持つ者 ここに立ち 時のオカリナをもって 時の歌を奏でよ」とあり、大人時代になると「時のオカリナ扉を開き マスターソードを手にした時の勇者 ここに降臨す」と書かれている。

聖地とトライフォース

神々のトライフォース」と同様の伝説が伝わっている。力の女神ディン、知恵の女神ネール、勇気の女神フロルは地上に降り立ち世界を創造、トライフォースを残していき、その地を聖地と呼んだ。
時の神殿が地上から聖地への入り口になっている。その鍵となっているのが、時のオカリナと、3つの精霊石、そしてマスターソードを抜くことが出来る時の勇者。
トライフォースは己の心を映す鏡であり、力、知恵、勇気の3つの心を測る天秤でもある。その力がなければ3つに割れ、その人が持つ最も強いものだけが残り、あとの2つは神に選ばれし者の手の甲に宿る。

ゼルダ

神に選ばれし姫。ガノンドロフの襲撃から逃れ、シーク族としてなりを潜め、リンクの目覚めを待ち、6人の賢者たちが復活する手助けをする。
自身も賢者の長となり、光の矢をリンクに手渡すがガノンドロフに見つかり、ハイラル城跡地にあるガノン城に捕らわれる。

ガノンドロフ

盗賊団ゲルド族の首領。黒い砂漠の民とも呼ばれるゲルド族は深い谷を越えたところに住んでおり、幻影の砂漠の入り口に砦を構えている。民族は女ばかりであり、100年に一度男が生まれ、その者は長となる掟がある。
聖地への入り口が開かれた隙に侵入。光の神殿でトライフォースを手にし魔王となったが、「力」の精神が強いためにトライフォースは分裂してしまった。より完全なる支配のために知恵と勇気のトライフォースを持つ者を探す。ハイラル城跡地に城を構え、その時を狙っていた。
六賢者たちが開いた封印にガノンは引き込まれ、こちら側の世界からゼルダによって封印は閉ざされた。力のトライフォースも彼が持ったままのようである。

大妖精の泉

体力を回復してくれる小さな妖精もいるが、大妖精のところへ行けば三大神の名が付く魔法を教えてくれたり、守備を強化してくれる。力、知恵、勇気を司る妖精がいる。

時の神殿

聖地への入り口となっている場所。光の賢者ラウルによれば、マスターソードは「時の勇者の資格を持つ者だけが抜ける」ということなので、リンクが眠りにつき時代を行き来したから「時の勇者」と呼ばれるのではなく、それ以前から剣を抜ける者は「時の勇者」と呼ばれていたということになる。
それは「時の神殿」も「時のオカリナ」も「時の歌」も、この一件の前からある名称だ。ゼルダ姫によれば、マスターソードは時を旅する船、時の神殿はその港となるという。

六賢者

リンクによって賢者として目覚める者たちのこと。各神殿から賢者の間へと集められ、自身を象徴する賢者のメダルをリンクに託し、力を与える。
コキリ族のサリア、ゾーラ族のルト姫、ゴロン族のダルニア、ハイラル王家に仕えるシーカー族の生き残りインパ、ガノンドロフの勢力に反旗を翻すゲルド族のナポールで、それぞれ森、水、炎、闇、魂を司る賢者。


一番始めに賢者の間でリンクに話しかけるのは光の賢者ラウルである。光の賢者は時の神殿を造り、聖地との道を繋ぐ者である。
ゴシップストーンの噂によれば、子供時代、リンクにヒントを与えていたフクロウのような怪鳥はいにしえの賢者の生まれ変わりらしい。それが光の賢者なのかはわからないが、リンクが幼少時代、この怪鳥は「ふたつの時代を行き来する少年のことを、このワシですら伝説と思っとったよ」といっている。
「伝説」というからにはたった7年やそこいらの年月ではないだろう。そもそも時間を旅できるのは時の勇者だけだと思うので、その怪鳥は7年後からやってきたラウルの化身ではなく、通常の時の流れにいるいにしえの賢者の生まれ変わりだろう。時の神殿でマスターソードが抜かれた時、もしくは7年後にリンクが目を覚ました時にラウルも賢者の間に光の賢者として復活したのかもしれない。(光の賢者のみ出身地が明らかにされてないが、おそらく「トワイライトプリンセス」に出てくる天空人ではないかと思う。それについては後日に)


以上のことを考えると、やはり大昔にも時を旅する勇者がいたのではないだろうか。「神々のトライフォース」でいうところの封印戦争が「時のオカリナ」であると思うが、実際には封印戦争の時にマスターソードが作られたのではなく、時の神殿にすでに存在している。封印戦争は「時のオカリナ」より以前にあったのか……とはいえ、その程度の誤差はつきものである。


ちなみに、ハイラルの盾には、トライフォースの紋章と鳥をかたどった模様が描かれている。ゲームボーイの「夢を見る島」でもヒントをくれるフクロウがおり、Wiiの「トワイライトプリンセス」にも最も神に近い天空人が残したフクロウの像が点在している。

シーカー族

フクロウはシーカー族のことを「ハイリア人の影」といっている。これはいったいどういうことだろう。インパはカカリコ村出身で、カカリコ村墓地にある闇の神殿を守る者である。井戸の中から闇の魔物が復活してしまい、インパは神殿へ様子を見に行っている。
墓地の石碑に「ここに眠る魂 王家に仕えるシーカー族 ここに村を築き 眠れる魂を守るもの」と書いてある。インパも「闇の神殿はハイラルの血塗られた闇の歴史。欲望と怨念の集まりしところ」と言っている。トライフォースを巡って聖地の入り口があるハイラルは争いごとが耐えなかったのだろう。
ハイラルの血塗られた闇の歴史」とは何だろう。王家に仕えるシーカー族も元は反政府軍であったのか。それとも王家の血筋の者もトライフォースを巡る欲望に過ちを犯してしまったのか。それとも闇の神殿に眠っているのは初代ゼルダなのか……。

魂の神殿

大人時代、ゲルドの谷を越え、幻影の砂漠を渡り、たどり着いたところは「巨大邪神像」と呼ばれる場所だった。ゲルド族から話を聞くと、そこはもとは魂の神殿と呼ばれる場所で女神がいる。だが、今では洗脳実験の場になっており、ナポールもそこへ行ったきり帰ってこないという。
子供時代に訪れてみると、ナポールは神殿へと入れずに、小さな穴から入れそうなリンクに神殿内に潜入してくるようにお願いする。しかし、ナポールはガノンドロフの手下である双子の魔女に捕らわれ、大人時代に助け出されるまで洗脳されてしまっていたのだった。


神殿はコブラが巻き付いたような女神像があり、スフィンクスを彷彿させる。ナビィも誰がなんの目的で造ったんだろうねと言っている。
エンディングで六賢者たちの魂がこの神殿へと送られてきたように思う。サリアも「リンクと一緒の世界にいることが出来ない」といってるように、どうやら6人の賢者は異次元の空間へと旅だったようだ。ちなみに、Wiiの「砂漠の処刑場」内部にはスフィンクスのような像がある。名残だろうか。

パラドックス

ゲーム本編中ではマスターソードを抜くと大人時代に移り、マスターソードを置くと子供時代に戻るが、どうやら戻るのはマスターソードを抜いてしまったあとでガノンが聖地に侵入してしまった後のようだ。
もし、リンクが子供時代に戻った時、ガノンが聖地へと踏み込む前であるなら、リンクが剣を抜かなければガノントライフォースに触れることもなく、必然的に未来は変わり、ゲームはそこで終わってしまう。聖地へ踏み込んだあとなので、リンクは未来でガノンドロフを倒さねばならなかった。


ガノンを封印した後、ゼルダもこういっている。「私はそのあやまちを正さねばなりません。マスターソードを眠りにつかせ、時の扉を閉ざすのです。今の私ならもとの時代に帰してあげられます」と、リンクから時のオカリナを受け取り、子供時代へ帰してあげる。
戻ってきたのはマスターソードを抜くよりももっと前、リンクとゼルダが始めて顔を合わせる時だ。そこでエンドとなって語られていないが、リンクは「今、マスターソードを抜くのは危険だ」と教えたことだろう。
おそらくそれで未来も変わったんじゃないかと思わせる終わり方だった。なぜなら、リンクがマスターソードを抜くよりも前に戻ってきたのなら、ガノンが聖地に踏み込むという未来が消滅されるからだ。


ただ、パラドックスが存在する。子供時代、カカリコ村の風車小屋に男がいるのだが、いい曲がないか探している。大人時代にやってくるとその歌を奏でられるようになるのだが、どうやら、子供時代のリンクが彼の前でこの歌を演奏したらしいのだ。
つまり、大人時代リンクがその嵐の歌を覚え、子供時代に戻ってその男の前で嵐の歌を奏でたことになっているのだ。しかし、プレイヤーはまだ子供時代にその男の前で嵐の歌を奏でたことがない。まだプレイヤーが起こしていない行動が未来に現れてしまっているのだ。


そうするとおかしなことになる。エンディングでリンクはマスターソードを抜く前に帰ってきており、ガノンが聖地に踏み込む未来は消滅されるはずで、先の法則でいくのなら、まだプレイヤーが起こしていない行動も未来に反映されるはずなのに、実際にはガノンは聖地へと踏み込んでおり、リンクは未来でガノンを倒している。
時のオカリナ」以後、リンクが時の賢者となってマスターソードを抜いてガノンを倒した世界と、マスターソードは引き抜かれず賢者と騎士団による封印戦争が起こった世界、2つの世界、つまりパラレルワールドが存在するかどうかについては微妙な問題である。


封印戦争が起こった後の時代とされる「神々のトライフォース」へと続いていくためには、マスターソードが扱える勇者が現れてはならない。続編の「ムジュラの仮面」ではリンクはハイラルから旅立っている。聖地への扉も開かれないことになるが、ガノンはどうやって聖地へ踏み込むことができたのだろう……。またひとつなぞが残された。




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