ゲーム録

テレビゲームについて語る

都市伝説解体センター

アドベンチャー

開発元:墓場文庫 発売元:集英社ゲームズ 2024年10月14日発売

プラットフォーム:Nintendo Switch / PlayStation5 / Steam

 

SNSから情報を収集

プレイヤーとなる福来あざみは、都市伝説解体センターの調査員となって、依頼のあった事件の真相を突き止める。

依頼内容は怪奇現象のような警察にはちょっと手に負えないというか、相手にされにくい事件。

SNS調査

まずはSNSから情報を収集するというのがいかにも現代的。

もちろんその中にはデマもあるわけで、だいたい把握したら現場に向かって直接話を聞く。

というのも、センター長である廻屋渉は、都市伝説というのはウワサが元になって、それが大きく広がって実態を持ったような都市伝説となる、という持論を持っている。

 

なので、まずは起こっている現象がどんな都市伝説に当てはまるのか『特定』をする。

 

ふたりの能力

廻屋は『千里眼』という異能を持つ。遠くにいても何でも見通せる力だ。

現場には向かわないが、あざみの脳に入り込んでコンタクトを取り、推理の手助けをする。

初心者でも路頭に迷わない設計で、推理の選択ミスをしてもゲームオーバーにはならない。

 

あざみは『念視』という異能を持つ。

もともと幽霊のような影が見えていることからこのセンターにやってきたのだが、廻屋にもらったメガネをかけることでよりその姿がハッキリと見えるようになった。

それは霊というよりは過去にそこにいた人物が見える残留思念のようなもの。

現場でその『影』が何をしていたのかを見ることで、謎を解き明かしていく。

念視は影となって現れる

はっきりいって、ふたりの能力はミステリーにおいてはタブーっていうくらい最強の能力。解けない謎があるわけない。

最近モキュメンタリーホラーが流行っているが、こちらはいかにもオカルトチックでホラーテイストなのだが、真相となればまったく様相が異なる。

都市伝説を解体し、人間が起こした悪行を実体化させるのがゲームの目的となる。

 

そしてその成果は、センター長自身が仮面をかぶって事件のあらましを動画配信。『都市伝説解体センター』のPRをしている。

センターの動画配信

不穏なアイテム

一話完結型の全6話。

各章の終わりにはエンディング曲がかかり、ムービーが流れてかっこいい。

縦軸としての繋がりが次章への興味をそそる。

 

その中心にあるのがダークウェブに存在する「SAMEZIMA」というサイト。

如月努というオカルトマニアを崇め、彼が発した「グレートリセット」という言葉が同調性を生み出す合い言葉のようになっていた。

その信望者はジマーと呼ばれている。

イルミナカード 闇から覗く目

サイトには6枚のイルミナカードが提示され、これを予言のカードだといっていた。

そしてセンターが関わる事件にこのカードがなぜか落ちており、あざみも「崩壊と審判」のカードをなぜか持っていた。

 

事件とSAMEZIMAの関わりは?

都市伝説解体センターに持ち込まれた案件が、SAMEZIMAと関わりを示すようにも思われるのだが果たして……?

想像していたより壮大な話になっていた。

 

ゲームとしてはすごくシンプルで、通常のアドベンチャーゲームのように探索を楽しむシステムではなく、サウンドノベルとの間にあるようなゲーム。

ただ、ラストの真実はブログやSNSで考察したくなるような内容で、そういう意味では口コミで広がることを想定したつくり。

集英社だけにメディアミックスの展開もお手のもの。

 

ということで、この先はネタバレ含みます。

自分も制作者の術中にはまってますね。

覚え書きとしてまとめておく。

 

2週目をやりたくなる仕組み

だいたいアドベンチャーゲームというのは一回やって謎が解けたらそれで終わり。

サウンドノベルは分岐点を用意して別のストーリーを用意することで複数回遊べるようにした。

ならば、このゲームは。

 

叙述トリックの小説を読んだときのように、もう一度最初に戻って本当にそうであったか、矛盾はないか、あらを探すように確認したくなる。

とくに、導入がどうであったか、どうやってプレイヤー(読者)をいい意味であざむこうとしていたのか、その仕掛けを確認したくなるものだ。

 

といっても普通は廻屋渉と福来あざみが同一人物であると思わないから、騙すつもりで描かなくてもいいわけだけど。

ふたりが存在していたときにはどう描かれていたのか。

みんなの前で電話していたときは?

とくに一緒に調査していたジャスミン(公安の警視正!)は気づかなかったのか――

 

ゲームの始まり

あざみは幽霊のような他人には見えない『影』のようなものが見える、ということがオープニングのムービーからもわかる。

それがどうにかならないかと、町中で見つけた『都市伝説解体センター』のポスターを頼りに、センターの拠点であるビル地下4階へやってくる。

 

そこで初めてあざみは廻屋渉を認識する。

ゲームとしてチュートリアルをかねた場面となっているのだが、廻屋にとってもあざみをコントロールするための重要なやりとりだったに違いない。

  1. 廻屋が存在する人間だと思い込ませること。
  2. 廻屋には千里眼という能力があるということ。
  3. (廻屋が見せていると思われる)影は念視で、それはあざみが持つ能力なのだということ。

一人の肉体に二つの人格があるので、ふたりが他人の前で一緒にいることはない。

サスペンスドラマよろしく事件解決場面では主要人物勢揃いしているから、廻屋が電話をかけてきて会話するシーンはきわどく、そもするとアンフェアといえる。

この電話のやりとりをそこにいるみんなに聞かせるよう廻屋自らが申し出ているのだ。

描写されているイラストではスピーカーにしている様子はないので、脳内に語りかけている廻屋の言葉を、あざみが口頭でみんなに伝えているということか?

 

と、そんなふうにプレイヤーはふたりが同一人物で多重人格であるとは、つゆほども思わないのである。

 

廻屋渉の千里眼は本物か

あざみは廻屋の存在に気づいていなかったが、その逆は違う。

廻屋があざみのことをなんでも知っているというのは、千里眼の能力がなくても見抜いていると思う。

あざみが行動しているその間も、一挙手一投足、ずっと頭の隅から目撃しているのだろう。

だからどこにいても、すごくいいタイミングでいつもあざみの脳内に登場する。

 

資料によると如月努の妹である如月歩にはギフテッドがあるとされる。

天才的なプログラマーであるのはもう確定的で、ハッピー777億円事件で巨額の金をせしめた。

あざみが現在大学3年生なので、21歳と仮定すれば14~15歳のときと思われる。

 

ギフテッドとはそのことを指すのか、千里眼や念視のことも含まれているのかはわからない。

廻屋はあざみ以外の人間とは接触していないので、千里眼についてはどうだろう、それが本物であるか私は確信が持てなかった。

 

福来あざみの念視は本物か

あざみの念視能力だが、ストーリーの中で、廻屋が見せている幻影だという結論にいたっている。

廻屋のたぐいまれなる洞察力(あるいは千里眼)で、あざみが得た情報や事前調査で知ったことを駆使し、あざみに幻影を見せて謎を解かせている。

 

つまり、廻屋は常に先回りしてすべての謎を解き明かして真実を知っているにもかかわらず、わざわざあざみという調査能力の低い人格を使って捜査しているのだ。

廻屋があざみとコンタクトをとらず、あざみの知らないところであざみになりすまして動き回ることも可能で、はっきりいって、廻屋にはあざみは必要な存在とはいえない。

半年もの間、正体がばれていないのなら、駒としてはジャスミンがいれば充分だ。

 

現に、廻屋は福来あざみになりすまして行動をとっていることがある。

福来あざみという人格をつくらなくても、廻屋はあざみになりすませるのだ。

しかも、プレイヤーも気づかないうちにあざみにスイッチングしたのではないかと疑う場面があった。

 

あざみの友人である美桜にお守りとして手紙を渡すシーンだ。

その章の終わり、あざみには覚えのないことを美桜がいってるのだが、それは手紙のことを言ってるのだと思う。

手紙の内容というのは、栄子に騙されているということ、オノを持った男が現れて血のりを部屋にまくという自演行為について。

 

そして、ゲームの終盤にもあざみは美桜に会いに行っているのだが、あざみはその手紙を見つけて読んでみて、SAMEZIMAの管理人が渡したと思い込んでいる。やはり内容は知らないのだ。

でも、この手紙はお守りといって渡した手紙とは別のもので、廻屋が別のタイミングで美桜に渡したとも考えられるので、あの場面で人格が切り替わったのかは保留にしておく。

 

話は戻って念視について。

あざみが調査中に廻屋も想定していなかった事態に遭遇している。

  • 富入が本をどこに隠したか
  • 黒沢優弥が万年筆をどこに隠したか
  • ジャスミンが『クローゼット』で資料をどこへ隠したか

実際、あざみには見えていた。

だから、あざみと廻屋の両者、あるいはどちらかの能力は本物である。

もし廻屋に千里眼の能力がなかったとしたら。

目的を果たすために、あざみの念視能力を開眼させたかった、という理屈は成立しそう。

 

ジャスミンの潜入捜査

ジャスミンは半年も前からセンターにいるといっていた先輩調査員だ。

一度も廻屋を見たことがなかったのだろうか。

いいタイミングで電話がかかってくるとはいっているから、実際にセンターで調査をしたことがあるっぽいのに。

 

しかしジャスミンはあざみに廻屋について何かを聞き出そうとしてないし、あざみについていって廻屋に会おうともしていない。

こっそり廻屋とジャスミンが手を組んでいてもおかしくないくらいだ。

 

だが、彼女はなにも知らない。

驚いたことに、ジャスミンは公安に所属している警視正だ。

どうやら最初の方は都市伝説解体センターの調査が目的であったようなのだが、次第にSAMEZIMAがセンターを巻き込もうとしている、というふうに考えを改めていったようなのだ。

 

SAMEZIMAが調査の対象になるのはわかるが、センターはちょっと変わった探偵事務所で、ただオカルトを配信しているだけに見えるのに、危険分子と思われたきっかけはなんだったんだろう。

どちらにしても廻屋に接触したことがないのは不思議だ。

けれども廻屋の方は彼女の『独自ルートの調査能力』を知っているので、すべてお見通しなのだろう。

 

センターの拠点である地下4階が廃墟になっているのをジャスミンは驚いている。

あざみが行った地下4階とは?

あざみとしてそのビルにやってくるまで廻屋はそこへ行ったことがなく、もともとずっと放置されていた場所であり、地下4階であざみが見た光景も廻屋が見せた幻影だったということみたいだ。

 

事件捜査の依頼をしてくる人たちもそのビルに出向いているのではなく、電話やメールで済ませているようだし。

誰にも知られていない廻屋の拠点が別にある。

誰も寄りつかなくなった廃墟の教会も利用している。

お金はあるのだからいくつも拠点はもてるだろうし、あざみとしての生活場所も確保しているのだろうから。

 

ジャスミンは管理人の顔を見たか?

ジャスミンに関しての謎がひとつ。

SAMEZIMAの管理人ともみ合って転落したとき、彼女はその正体に気がついたようで「そうだったのか」「ゼロ枚目」という言葉を口にした。

SAMEZIMAの管理人の正体は廻屋(もしくは如月歩)だ。

ジャスミンは廻屋(如月歩)の顔を知らない。

だからもし素顔を見たとしたら、あざみだと思うはずなのだ。

 

あざみだと思ったら上記のような言葉は出てこない。

あり得るとしたら、如月努は自殺を装っただけで、実は生きていたとき。

如月努がSAMEZIMAの管理人となって復讐しようとしているのを、廻屋が加担している、あるいは止めようとしている、そんな展開ならば……

 

結局のところ、ジャスミンは顔を見たわけではなく、自分が知り得た情報を伝えたかっただけなのかもしれない。

直前にクローゼットで情報を得ていたが、上司の富入にはまだ報告をしていなかったから。

 

だから、ジャスミンを抹殺するにしてもちょっとタイミングが早いと思った。

廻屋はハッカーだからネットに繋がった情報を入手するのはたやすいが、警察庁の厳重管理下にある紙の資料を盗み出すのはなかなか困難だ。

ジャスミンがいなくなったら物証が手に入らない。

 

でも廻屋には福来あざみがいた。

やはり彼女の能力は本物なのだ。富入もその能力を体験しているのであざみに依頼してくるかもしれない。

ジャスミンがいなくなればクローゼットに侵入する機会が得られるのだ。

 

そもそも廻屋が直接手を下す、テロ行為をそそのかすということに強烈な違和感を覚える。

官邸とか大使館とか、彼の目的はそうじゃない。

やるとしたら、もっと話題になるようテレビ局とか、もっと一般に恐怖する地下鉄とかだ。

でも信者の暴走やミスリードというならまぁわかる。

廻屋は公安の機密情報がほしかったのではなく、黒沢父の隠蔽を暴きたかったから、注意をテロ行為へとそらし、本来の目的である黒沢父へとたどり着きたかった、ということか。

 

福来あざみはいつ生まれたか

あざみによると、『影』は生まれたときからずっと見えているという。

『生まれた』というのはいつだろう。

彼女はなんのために生まれたのか。

 

如月歩には強い恨みがあった。

上野天誅事件がもみ消され、事件の犯人が兄・如月努であるかのようにSNSでたたかれ、それがきっかけで自死したことに対する警察、世間への復讐心。

事件について丹念に調べ、用意周到に準備している。

ある意味モンスターでサイコパスだ。

けれども、如月歩は強い悲しみがないわけではなかった。

 

第5章にこんな場面がある。

コンビニの前を歩いていると影がついてくる。

暗い路地に入ると、なぜかすごくうるさい。

それは世間が責め立てる声だろう。

そしてこんな声が聞こえてくるのだ。

「見たくない。聞きたくない。怖い。辛い。助けて」

それに対してあざみはこう答える。

「そうですね。静かなところへ行きましょう」

 

あざみはドッペルゲンガーと出会うのだが、なぜかその人物に向かって「センター長さん?」と呼びかけている。

如月歩は自分の心を保つために人格を分裂させたのだろうか。

すべての記憶をなくし悲しみから逃れた福来あざみと、復讐を誓った廻屋渉と。

 

けれどもあざみにもイルミナカードを送っている。

それはすべての真実を知り、目を背けることなく受け入れろという暗示か。

5ソサエティのように、シラを切ってのうのうと生きていることに対する復讐なのか。

自分がとんでもないことを引き起こした張本人であることに絶望しろと。

 

それとも、兄が研究所に残したメッセージにあるように、グレートリセットしていつかまた笑ってオカルト話ができるようにとの願いなのか。

自分の理解者となって賛同してほしかったのか。

 

如月歩は警察にこんなメッセージを残している。

福来あざみはなにも知らない。それでも逮捕して罪を償わせるのか。

如月歩が本当にそんな仕打ちをしようとしていたのかわからないが、行方をくらませた。

 

最後のシーンを見ても人格は統合されていないようだ。

あざみは多重人格であることも知らなそう。

ひょっとしたら、あざみという人格に関しては如月歩と廻屋渉では意見が食い違っているのかもしれなかった。

 

番外編 トシカイくん

あざみは廻屋から手帳をもらい、、調査メモや人物相関図を書き込んでいるのだが、都市伝説や用語の解説はトナカイのトシカイくんが独自に調べてまとめてくれている。

手帳

えっと、誰ですか?(笑)

最後まで読み進めると、彼が自称イマジナリーフレンドだということがわかる。

えっと、誰のですか?

 

如月努がいた犬神大学の研究室で、歩が書いたと思われる絵が見つかる。

ふたりの年は離れているようで、親も早くに亡くしたことから歩はこの研究室およびPCルームに入り浸っていたらしい。

その絵には一つ目の布をかぶった人間らしき物体2体と、トシカイくんが描かれている。

如月努が幼いころ、そのような布をかぶって遊んでいるのを公園の管理人も目撃しているから、これは如月兄弟だろう。

どうやらトシカイくんは歩のイマジナリーフレンドらしい。

どうりで。都市伝説をよく知っているはずだ。

 

通常イマジナリーフレンドは他人には見えないし、その存在と他人がやりとりすることはない。

幼少期に出現して成長と共に消えることが多いようだ。

歩って、精神年齢が止まったままなのだろうか。

廻屋と如月歩をイコールで結んでいいものか。

如月歩の実態は謎だ。だからみんな考察してしまうのだ。